CODE 037 2012-09-06 193134
No.037 - 第四章 接点 10
地下都市型建造物
スイスの山奥の地下には広大な地下都市型建造群が広がっている。ここで科学史上類を見ないいくつかの基本的発見が成された。
その一つが、核融合技術でこの広大な地下空間に無尽蔵に近いエネルギーを満たし、この技術のおかげでこの空間での生活が非常に快適なものになった。
天才科学者たちとドイツの極めて精度の高い技術が核融合炉を完成し、そのことでこの中の地下空間は地上のどこからも電力を引く必要もなく、その有り余るエネルギーで食料を含む自足自給をはるかに超えた居住空間を確保する事が可能になっていた。
その糸口は統一場理論の完成だった。地上の科学者たちはその夢をいまだ追いかけているが、完成していない。この根本的な問題が解けないのは、社会の中では発見や発明を邪魔するものがいるからだ。
統一場理論とは、この世界の自然の中に存在する力を大きな観方で見ると、重力と電磁気、それと原子核の中の弱い力と強い力の4種で、それぞれにかなり高い精度での数学的な力学が成り立つが、この間に共通したシンプルな力学的公式のことだ。
りんごが木から落ちるときに見つけたと言われるニュートンの重力の法則が、電磁気や核力との間に共通した理論が構築されると、極端な話、電気や核力を使って反重力が可能になる。重力を制御することは、パラレルワールドを移動する事さえ夢ではなくなる。
この難問を1975年に解かれ、その理論を元に核融合技術が完成した。核融合は原子力発電のように核分裂によるエネルギーとは逆で核が融合する時に莫大なエネルギーが発生する。
アドレナリンが噴き出して猛烈な勢いで暴れ狂う熱を核分裂に例えると、核融合は愛し合う二人の間に生まれる熱いエネルギーに近い。
このエネルギーはより多次元的でコントロールが簡単、危険が少ないなど多くの利点があ
るが、とりわけ優れているのは、ここで創られたエネルギーが、電磁場の性質を使って電気配線なしに、この地下都市のどこにでも熱や光、電気に変換して発生させられたことだ。
地下数百メートルの深さでも、必要とされる壁面に光子を集中的に発生させ、部屋全体を明るくする事も暖かくする事も容易なので、植物も自然成長し、空気も地上より新鮮になっている。