白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.067 - 第七章 愛 4

架け橋

 ギョロ目の親父こと結社ナザレの主事は、非常に特異的な人間だ。この常識の世界と虚空の世界に片足づつまたがって、不思議にも生きている。

 西暦1860年生まれ、ナザレの結社を結成した1896年、36歳の時は精神の高みに達している以外は普通の人間だったが、量子場の研究を続ける間に時間空間の常識的な認識を越え、76歳には心の働きと量子場を完全に一致させ、時空間を飛翔する技術の完全な構築に成功した。
 
それ以後歳をとる事がなく、現在2019年でも完全な健康体で虚空である非在世界と現世の存在世界の二つの世界にまたがって生きている。

 彼自身に対する仕事は既に終わっている。肉体的にも感情的にも彼の中には問題と言えるものは何一つ残っていなかったからだ。
 
ただ世界に対してのやりかけの仕事が残っている。それは人間の能力的な進化を促進する事。そして人間、人類の意識そのものに創造的なシフトを起こす事だ。
 
この時のために数十年の長い時間、パラレルワールドを探索し人間が進化し、内側に意識的な進化発展を起すための準備をしてきた。
 
このパラレル世界の価値は、物理世界や虚空にあるのではなく、その間の架け橋として在る。
 
もし、この世界の一人でもパラレル世界を移動し、その世界に確固とした道を開くなら、数十億の人間の意識の中に平行宇宙への道を開いた事になる。
 
その様な意味では、この道は彼によって既に開かれている。しかしこの道はもっと多くの人たちによって達成されなければ人間の集合的な臨界点に達しない。

 虚空の世界の中にあらかじめ法があり、物理世界の宇宙にもあらかじめ多くの法があるが、その道とはこの二つの世界の法を一つにまとめる法のことだ。

 21世紀になって統一場理論の試みが急速に高まり一般世界の優秀な研究者達の心が熱く燃えた時期があったが、ブライアンの地下組織が秘密裏に彼らを撹乱し、主だった科学者
たちを抹殺し、一般社会からこの認識と研究心を消し去ってしまった。
 


この統一場理論を完成させるには、虚空と物理世界の間を取り持つ意識が必要になが、一般科学には意識が含まれていない。含まれていないと言うよりも、意図的に含ませなかったのだ。

そのために物理科学は進化したが、人間自身が進化する方向にはなかった。



 量子群は意識された観察によって変化し、肉体や世界の意識的な創造に道を開くものだ。しかし金融支配やその後のブライアンの地下結社はその道を塞いだので、その後の量子論はその羽根をもがれたところで右往左往している蝶のようだった。
 
その人間意識に関しての研究と実績は結社ナザレにあった。ブライアンは主事の元で学んでいたその当時、その様な意識の研究は夢物語に近いものであってその時代のサド的な世界の支配構造には役に立たないと判断した。 

しかし、金融と量子チップによって進化したはずの世界支配をあざ笑うようにパラレルワールドを開きその中を移動しているナザレの主事がいる。
 
ブライアンは、いらつきながらも彼を追いかけ、そのノウハウを結社から根こそぎ奪う機会をうかがっていた。

 そんなおり、東京に転生したナザレのメンバーが動き出した。それは、ブライアンにとっても待ちわび望むところでもあった。


ナザレのと思われるいくつかの事件を確認したブライアンは、そのための周到な計画を立て始めた。

 

地下都市の全体を把握している男がブライアンの他にもう一人いる。その男の名前はダイアン、ブライアンの肉体年齢の一つ下の38歳、彼はブライアンの片腕に近い。
 
彼の居住区は科学者居住区だが、工作員居住区にも住まいを持ち二重の生活をしてる。どちらにも家族と妻がいて公私共に精力的。実用段階に入った遺伝子操作技術によって生まれた傑作品である。

 ブライアンは彼があまりにも知的にも能力的にも勝れているので、その能力を分断するために二重の生活をする様に命じた。その事で科学力と世界支配の調整役である彼の仕事が効率的になり、また彼の注意力が二つの方向に向かうので彼の反逆の可能性をつぶし、コントロールし易いと計算したからだ。

それほど彼の環境と仕事上のポジションは反旗を翻すあらゆる誘惑に取り巻かれている。

 ブライアンの意図どおり、彼は仕事を完璧なほどにうまくやり、二つの家族もバランスをとりながらもよく面倒を見、世界の反逆分子に対する時には罠を仕掛け、時には謀略、暴力を臨機応変に決断してきた。その知性はブライアンに次ぐものであり、大変なものだ。

 このダイアンをブライアンはミーナと一緒に住んでいる広大な住居に呼び出した。ミーナもブライアンの隣の深いソファーに座っている。
 

「閣下、ミーナ様お久しぶりです」

 「家族はみんな元気でやっているか」
 
「はっ! 両方に子供が5人授かっており、みんな幸せに暮らしております」
 
「そうですか、、ダイアン、みんなかわいいでしょうね」

 「はい、ミーナ様、私は幸せ者です」
 
「ダイアン君、呼び出したのはちょっとした仕事をしてもらおうと思ってのことだ」
 
「は! どんな事でも遂行してお見せ致します」
 
「結社ナザレが2年ほど前に再結成されたのを知っていると思うが、そのあたりから不穏な出来事が度々起こっている。その事を調べるために家族を連れて東京に移ってもらいたいのだ」
 
「両方の家族を連れてでしょうか」

 「いや、どちらでもかまわないが、一方の家族の方が良いだろう」

 「わかりました。ナザレは私も気にかけていた所ですので、お任せください」
 
「ん、さしあたりナザレの問題の全権を君に任せる。おそらく今までで一番の難関になるだろうが、頑張ってくれ」
 
「はっ! 私もその様に感じております。今まで長い間ナザレの主事をマークしておりますが、彼の能力には我々にとって途方もない危険性を孕んでいます」
 
「そのナザレの主事ってどんな能力なの?」
 ミーナが割って入った。
 
「はい、どうやらナザレの主事はパラレル世界、つまりこの時空間を科学装置を使わずに変化させ、この地球上のA地点からB地点に身体ごと移動しているのであります。
 その能力は我々の支配構造を脅かすもので、もしこれが意識科学を伴った技術であるなら早期に葬り去る必要があります。どうやら主事の研究はその種のものなのです」

 「そうなの、すごいわね!...その移動の間にはどこにいる事になるのかしら」
 
「おそらく、我々の瞬間移動装置の様に、事前に意識を量子状態に移動させて
いるでしょう」
 
「という事は、二つの世界に住んでいて、そこに橋が架かっている事になるわ
ね」
 
「そうなりますね、意識は量子状態に、身体は物理世界にいながら、この二つ
に橋が架けられます。それが瞬間移動です」
 
「すごいわね! もしそれが本当なら、あなた以上の二重生活者ね」

 ミーナはちょっとした悪戯をダイアンに放った。

 ブライアンとダイアンは顔を見合わせながら苦笑いをし、ミーナはそれをよそに東京にいるはずのミヨが自分の前に現れた事を思い出していた。

 「ミヨさんと私の間に橋がかけられている...」と心の中でつぶやいた。