白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.061 - 第六章 接触 5

ホワイトマジックとブラックマジック

 結社ナザレのメンバーの中にアザミというすばらしい女性がいる。彼女は前世において主事が発見構築した高度の知識の保持守護者として同じ東京に転生している。
 
主事はその技術をミヨに授けるつもりだったが、その当時、彼女は感情の中に問題を抱えていたため、既に感情を越え正義心のあるアザミに託した。

彼女は、いつも明晰で、切れが良く意思と感情に濁りがない。

 ミヨは世界を守る大いなる愛であり、アザミは知識を保持する頑な意志と言える。

この二人は前世から深い友人であり、今生でもお互いの存在をどこにいてもわかる程だ。

 主事は、このアザミに特別な魔的な力学も授けた。

 量子の性質は物理の力には従わないが、意志の力には難なく従う。だからこの量子を変化させる技術は魔法に近い。しかし、その魔法に二つの方法があり、一つは量子の双子のように'もつれる'性質を正確に展開したホワイトマジック、もう一つは逆の性質、'捻じれを展開したブラックマジック。つまり魔術だ。
 
この技術を彼女は自身の中に能力化している。主事が彼女と知識を敵から守るために、この力学の複雑な展開は暗号化し伝えたのだ。
 
もし、彼女が悪意のある相手を許さないと意志するなら、その者は即、生命力が枯渇したり、病気や麻痺が起こる。その時アザミは逆に相手の生命力を自分自身の身体の中に満たす事になる。

つまり与えると、その相手と同じものを得るのではなく、減るのでもなく、逆のものを奪うのだ。
 
感情的な人間が、この技術を使うと、寿命が延びるが生命力ばかりが高まり身体の細胞がそれに追いつかない臨界点に達し、身体全体が消耗して老婆のような風貌になってしまう。
 アザミはこの技術を試そうと思った事はない。だが使わざるを得ない状況がやって来ていた。
 彼女は大学の数学講師として働いており、最近ちょっとした論文が科学アカデミーの目に止まり、この内容がブライアンの科学に抵触したため、抹殺指令が出されたのだ。

 
このような事は、ブライアン以前にも行われ、多くの発明家や技術者が抹殺されている。
 前頭葉に埋め込まれたチップは、人の行動や反逆的な思考や感情を支配する事は出来るように設定されているが、人間の脳の考える能力を制限してはいない。そのため知って欲しくない新発見はその芽の内に抹殺する組織がつくられている。

 その組織に狙われていた。

 そのやり口は単純で拉致した後、尋問も拷問もなく、そのままにクルーザーに乗せられ海に沈められる。
 アザミもこのやり口で組織に拉致され遠洋に停泊しているクルーザーまで連れてゆかれた。

 この一連の出来事を、主事は知って、彼女を守るようにパラレル世界を開き見守って来ていた。
アザミの魔的な能力を彼女はどのように使うか。もし、命に危険な時までその技術を行使しないなら、救出しなければならない。
 
彼らは無口なまま、彼女を拉致した。アザミも無口なまま彼らを観察していた。

 クルーザーの中には数十人の乗組員がうろついていたが、甲板までみんな上がってきていた。処刑を見るためだ。彼らにとって処刑はちょっとしたショウであり喜びの瞬間なのだ。

 甲板まで連れてこられ、座らせられた。アザミの腰には太いロープが巻きつけられ、そのロープは直径60センチほどの鉄の錘とつながっている。
 
銃を持ったニヒルな顔をした男が銃口を彼女の頭に向け、口を開いた。
 
「何か言いたい事はあるか」

始めて、その男は口を開き、同じようにアザミも口を開いた。
 
「それは、あなた達に聞きたいこと。。。」
 
「なにぃ、、。。。」
  
その瞬間この処刑を楽しみにして集まっている数十人の目の前が同時に暗闇に包まれ、その全員が床に頭部が打ち付けられるゴツンゴツンという音とともに倒れていった。その者たちは人が死ぬ瞬間を見る事を楽しんできたが、今回は自分の死を身体の内側から観ることなった。
 
アザミはこの魔的な技術を毅然とした言葉と共に行使し、その瞬間に彼らの生命力を一滴も残さず抜き取ったのだ。罪悪感や悲しみの感情は微塵もなく、自分の身体の中には、有り余る生命力が満たされた。

 銃を拾い身体と錘をつないでいるロープに向かって引き金を引いた。銃声が鳴り響いたが、シーンとしている。動いているものは海の波だけで、生命の気配さえない。数キロ先の浜辺まで海を泳いで帰ったが、今までに彼女の人生でこれほど生命力に満ち生き生きと感じたことはなかった。

 彼女は思った。
 「人の命は儚い。でも私の場合は、そのような儚い限られたものではない。ならば、この奪い取った有り余る生命力を、真実を生きるすばらしい人たちの為に使おう」

 アザミは、人の命を抜き取って初めて、自分の人生が真実の為に戦う事を心の深いところで決断した。
 彼女にとって真実は命以上のものであったからだ。


 主事はこの現実のすぐ近く、一瞬でアザミをパラレルワールドに移動させ救出出来る次元に在って見守っていた。
 
今,量子場の叡智を保持している者を死なせるわけには行かない。もし、彼女の意志の中に設置した魔の武器を使わないなら、彼女は叡智もろともこの世から消える。その事は避けなければならない。
 
彼女の心はいつも気高く、感情を交えないところで正しさを求めていた。他人の不幸が喜びになっているような彼らは、いずれその不幸がそのものにやってくる。

そのような、人間を彼女は憎んでいたわけではなく、彼らの深層の意識はそのように求めているから、そのように行使したのだ。
 
もし、罪悪感や情の念が彼女の無意識を汚すのなら、彼女自身の中で苦しむだろう。しかしアザミの心の中にはそれがなかった。
 結局のところ、善悪の判断を下すのは他人ではなく、本人しかいないのだ。

ならば苦しむものは誰もいない。命を抜き取られた殺し屋たちもいずれ生れ変わってる。それなら誰が誰を罰するのか。罰するものも罰せられる者も自分以外にはいない事になる。
 
だが、主事は出来るなら、世界に人間自身の進化をもたらしたいと思っている者の一人であり、どんな人間もその可能性の為にこの生があるとも思い、また自分自身にもこの是非を問いかけているところがある。

 だから、この魔的な技術を結社ナザレの最も過去や感情に捕らわれない聡明な女性に託し、彼女だけに魔女と女神の両方の技術を託したのだ。