白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.070 - 第七章 愛 7

揺らぎ

 この頃、スイス地下では、全世界の量子状態を管理している装置が東京の場に奇妙な変化を検知していた。

 通常、地球全体を包む量子場状態は、人間の意識的な干渉がない限りそれほど大きくは変化はしない。この地球上の量子場を変化させているのは今までのところ、ブライアンの世界各地に設置してある瞬間移動装置以外はなく、当然その微細な変化は地球全域において常に彼らのコントロール下にあった。
 

自然が人工的な干渉がない限り、バランスを崩す大きな変化がないのと同じで、地球の量子的な場は知性を持った文明の科学技術によるものか、人間自身による意志がこの時空間に干渉しない限り大きな変化はない。
 
つまり量子の場を自然に反して変化させるのは、科学技術か高い意識をもった人の意思であり、両方共にその背後にある高度の意識がある。
 
もし、数十人の人間が同じ東京の時空間の量子場を意識的に活性するなら、現実世界は徐々にパラレル世界の様相を帯び、集合的な意識が活発になる。それは必然的に起こる。

量子場と現実世界が別々のものではなく、この間に引き合いながら恋愛のような揺らぎ
が起こり始めるからだ。
 
普通、意識が幽体から離脱すると夢のような受身状態になってしまい、単にその場に従った偶然の世界が目の前に展開するだけだ。しかし幽体が離脱した状態から明快な意図を保持し、場を活性する事が出来るならその意図に即したパラレル世界が薄いベールの様に現実の世界に浸透し始める。

 この事を、彼らスイス本部の科学者たちは知らなかった。電磁気的には量子場を活性する方法を知っているが、人の意思が現実世界にそれほど影響するとは考えもしなかった。
 
彼らはこの自然では起きえない不思議な変化を見据え、それが何を示すものか究明すべきであるという結論に達した。



 この事に関して、ブライアンにもう一つ報告があった。
 
「このスイス地下都市の地上にも微細ではありますが、明確な人為的と思われる量子群の乱れを感知しております」
 
「なに!それは外部からの侵入か」
 
「はっ、物理的なものではないと思いますが、確かに外部からの侵入の可能性があります」
 
「ナザレのオヤジの可能性はないか」

 「いえ、その波動ではありません。」

 ブライアンに不可解なものはナザレの主事以外には何もなかった。
 
「すぐに、究明しろ」
 
「はっ、わかりました」

 彼はどんな行動にも安全率を極めて高くしてきた。リスクを犯す事はあまり好きではない。そのために地下400メートルの深さに居城を造り、その中から世界を見つめ、決してその存在を現さなかったのだ。その領域に侵入があってはならない。
 


 東京のショウの周りは平安な時が続いていた。宇野を初めとした羽田の拠点での管理者も自分達の身に災いが降りかかるのを恐れて静観している。閣下の直接の指示、「泳がせておけ」と発令されていたからなおさらだ。
 
ブライアンは、銀座の治療所にいる男が、前世で自分が拷問の末にあの世に送ったショウであることを直感し、その周辺にどんな人間が関係しているかを調査するようにスイスの本部から直接指示している。
 
羽田の管理責任者は、この銀座の治療所にいた男はブライアン閣下の過去に何らかの縁があると考え、下手な事をするとやばいと極度に恐れた。
 
彼らの恐怖はショウの正体がどんなであろうと、それ程のものではないが、本部の通告は怖い。反逆要素が少しでもあると容赦なく消される。それが直接、閣下であるブライアンとなると極度の恐怖に襲われるのも無理はない。

 ずいぶん前、すでに伝説になっているが、結社が結成されたころ4人の新米者が仲間の見ている前で生きたまま次々に切刻まれ犬に食わされるのを、残りの者にも見せつけながら行われた。ブライアンは泣き叫び許しを請う彼らに見向きもせず瞬き一つせず見つめていたらしい。
 
その若者達は敵のナンバー2であったミヨを抹殺命令に従って完遂し、ちょっとふざけていただけだった。今をもっても、何が彼らへの不満だったのか不明なままだ。そのような狂気には誰も勝ち目はない。

 そのミヨが東京に転生し、銀座の治療所の男と何らかの関係があるとの情報から管理責任者は「触らぬ神に祟りなし」と決め込んで、出来るだけ遠巻きにショウの周りを伺っていた。
 
そのためもあって、銀座の治療所とその隠し部屋になっているアジトでは、真理の種のメンバー、ナザレの結社メンバー、そして創造の戦士の一員であるトロンらが、友情を育みながらゆっくりと量子場技術を進化させていた。