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No.062 - 第六章 接触 6
泳がせておけ
「ご報告、申し上げます。東京の沖に停泊している抹殺処理用クルーザーの乗組員45名が全員、何者かによって絶命させられました」
「ほう! どんな武器を使って消されたのだ」
「まだ調査中で詳細は不明です。何しろ全員死亡しておりますので、その情報が十分ではありません。現在判明しているのは、全員同時刻に絶命している事と、倒れたときの損傷だけで他に物理的な武器や化学兵器が使われた痕跡が見つかっていないという事です」
「量子場解析で、その時間の波動と振動状態を調べてみたか」
「それが、この場は前後数時間にわたって量子的に干渉をされている可能性があります。何も映らないのです」
「なに。、、、、、そうか。。。。、、、、引き続き調査しろ。。。。。。」
今までに、ナザレの結社が我々のエージェントや拠点を絞って攻撃した事はない。おそらく結社のメンバーを救出したのだろう。その時どんな人間を拉致したか調べて報告しろ。。。待て、クルーザ周辺の場がミヨの遺伝子波動に共鳴していないかどうかも調べてみろ」
「わかりました。すぐに結果をご報告いたします。」
以前、羽田の拠点を、ナザレのメンバー数名が、仲間と思われるもの達を救出して去った事があるが、その時は我々側の人員、コンピュータなどの被害を受けたが誰も致命傷までは受けなかった。しかし今回は乗組員全員が死に至っている。
この点をブライアンは考えていた。
ナザレは基本的に性善説側であり、我々は性悪説の側だ。我々から見るとナザレの甘さが見えるが、彼らからすると我々が悪であるように見ているだろう。それはそれで当然の帰結だ。
今までに彼らにしてきた事は単なる策謀だけではなく、処刑や無残な熾烈を極めた拷問とを行ってきた。だが、報復された事は、今までに一度もない。
今回、組織の末端である殺し屋どもとは言え、全員の息を止める行動に出たナザレに何が起きたのだろうか。
あの信心深いナザレの甘い奴らが、我々の世界に楯突く体制に出たのか。それとも処刑を彼らから見て許しの限界を超えたからなのか。
そもそもどのような武器を使ったのか。報告によれば武器は見当たらないし、死んでいる数十名の身体に何の傷もないという。
その点を明らかにしなければならないだろう。
「報告します」
「んッ」
「場の解析から、ミス、ミヨの遺伝子の共鳴率は1パーセント未満でした。またクルーザー内のコンピュータ記録によると、東京大学の数学講師をしているアザミという女性を拉致した時間にあたります。
その拉致抹殺指令を出した理由は、数学上の数式が量子に関するほど我々の技術に抵触していたからである事がわかっています」
「その数式と記事を調べてすぐに送れ」
「ここにありますのですぐに送ります」
「なるほど。。。。。この数式は我々の量子技術の基本を露にする。。。その女性は見当たらないのだな」
「はい、海中に埋める錘につなげたロープが銃によって断ち切られている事、救命ボートは使われていない事などを考慮すると、おそらくこの女は海に飛び込んで去ったものと思われます」
「証拠らしきものはないのか。」
「その時、使った銃を探しているのですが、まだ見つかっていません。おそら
く海に投げ込まれたものと思われます」
「、、、おそらく彼女はナザレの一員で場をパラレル世界にシフトしたのは、あのオヤジだ」
「アザミを探し出して再度拉致しましょうか」
「いや、泳がせておけ。彼女には何か秘密があるに違いない。今彼らに近づくのはこちらも危険だ。いずれ向こうから姿を現す。それまで何もするな」
「わかりました」
「私たちの拠点に被害があったの?」ミーナはこのやり取りを横で聞いていた。
「いや、非道を非道で返されただけだ」
「ナザレの人たちも、身を守る術はもっているのね。ちょっと安心したわ」
「僕もそう思うよ。今まで彼らには非道に非道を重ねてきたが、彼らに仕返しされた事はなかった。それはちょっとした罪悪感を感じていた所だからな」
「ブライアンも、人の子ってわけね。早く東京に行ってみたいな。」
「僕も東京には興味がある。異郷だけど、昔の友人に会うような気分さ。向こ
うはそうは思っていないだろうけどね」
「今度の東京行きは罪滅ぼしって事なの?」
「いや、そうでもない。彼らは妙に進化している。下手をするとこちらが危険な状況になるぐらいだ。それほど悠長に構えていられない」
「そう、、、、こんどの東京の旅はハネムーンではなくなるわね。」
「そうは思わないよ。すこし刺激があった方が楽しいんじゃないかな」
そこにショウやミヨのアジトがある東京銀座の報告書が送られてきた。