白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

CODE 063 2012-10-15 174649

No.063 - 第六章 接触 7

盗聴

 銀座のアジトである、ショウの治療所に以前の殺し屋5人組のボスが片目を強打されて、頭蓋骨まで歪んでしまったと訴え、治療を受けにやって来た。
 
何が起こるか、その背後から宇野が、盗聴器で興味津々盗み聞きをしている。

宇野はこの男に古ぼけた盗聴器を仕掛けた。この殺し屋を窮地に落とし、事の成り行きを見たかったからだ。その事をスイスの本部にも報告済みだ。
 
ブライアンは、その内容を本部にも同時に送るように指示している。

 「先生、この前はとんだ勘違いをしてしまいまして、申し訳ありませんでした。これ、ほんのお詫びの印でして、どうぞ納めて下せぃ」
 
「バカヤロウ、お前達に用はないから帰れ!」
 
「いえ、すみません。ちょっと診て欲しいんで。お恥ずかしいんですが、馬鹿な奴がオレの目を突っついたおかげで、頭が割れるように痛くて眠れねえんでやすよ。頭骸骨が歪んでいるから医者には、薬では治らんと言われてしまったもので、、、ひょっとして先生ならと。恥を覚悟で来たんです。お願いできやせんか」
 
「ちょっと口を開けてみな」

 「口を開けるのも、頭に響いて、このぐらいしか開かなくなってしまったんで」
 
「馬鹿だな、お前は」
 
「何ぃ!、、、いや、本当にその通りで、、、何とかぁ。。。。。」
 
「その前に、襟の脇についている盗聴器をはずして出直して来い!」
 
「ゲッ。。。す、すみません、、、、、、分かりやした、そ、そうします」
 
「仲間の宇野という奴らに言っておけ。今度は戻れないぞって。この盗聴器で聞いているだろうと思うが、もう一度はっきり「今度は戻れないぞ!」と言っていたと言うんだ。わかったな」
 盗聴器を通して聞いている宇野を始め3人の仲間はゾッとした。同時にスイスで聞いているブライアンも同様にゾクッとした。ブライアンはこの声のイントネーションは日本語であるにも関わらず、転生したショウであることを直感的に知ったからだ。

 ショウが言った。
 「ちょっと待て!」

 またもビクッとした。帰ってどうしてこの失態を報告しようか考えいた矢先だ。
 
「治してやるから、そこに寝ろ」
 
「え、えっ本当ですかい」
 恐る恐る横になった男の首の後ろを、30数秒触れ軽く揺らした。
 
「口を開けてみろ」
 「あっ、あ、ひ、開きます。。。。痛くない!」
 
「終わりだ。もう来なくていいぞ」

 首を絞められて殺されるかと、心配で緊張していたが、立ってみると今までの痛みや頭の重さもない。不思議な事に視界がパッと開かれている。半信半疑だが、深々と礼までをして逃げるように立ち去った。

 この一部始終を聞いていた羽田の宇野たちは、ショウを拉致して逆に脳を梗塞された時、この男は言った。「私はキリストではないぞ。もしそうなら危険なのはお前達ではないのか」その事を思い出していた。
ひょっとしたら「彼はキリストに近い超能力を持っているのかも知れない。下手に手出しすると前のように脳を梗塞され、今度は戻って来られなくなるのではと、本気で考え始めた。


 彼ら、羽田を含む、世界の拠点には、ナザレという結社が存在する事は知らされていない。だからこのような不思議な能力にはただ恐れる習性がある。その事を目の当たりにすると、混乱するしか術がない。

 つい最近、抹殺用のクルーザーの乗組員全員が何者かに消されたが、その死に方が尋常ではなく、何の原因もなく命が途絶えているという。その事を仲間から聞かされていた。

その事からもショウの「戻って来れないぞ」の言葉は宇野たちにとって単なる脅しには聞こえない。

 ブライアンはこの会話を聞いて、以前のショウの話し方の間の取り方や、息使いからショウである事を確信していた。

 宇野は本部スイスに連絡網を開いて伺いをたてようとした。その時、ブライアン閣下から直接連絡が入った。

 「はッ!。。。閣下。 恐縮です」
 
「今の盗聴を聞いたが、この話の内容を翻訳してすぐに送れ」

 「はっ!今すぐに送ります。あの男はただ者ではない様であります!」
 
「わかっている。こちらからも調査する」
 
「はっ!」
 ブライアンは、東京に派遣した「創造の戦士」のリーダであるシュタインをケイタイを使って直接呼び出した。
 彼は非常に優秀なリーダーではあるが、量子場解析による彼らの疑似体験を可能にするチップ回路が胸に埋め込まれ、テレビ画像よりも、もっと事細かに彼らは観察されている事を知らされていない。

 「元気でやっているか。シュタイン君」
 
「はっ!閣下、!」
 
「あるナザレの主要メンバーが転生している居場所が特定できた。その男と仲間達に接近してもらいたい」
 
「敵としてですか、それとも友人としてでしょうか」
 
「今はどちらでもない。いずれ、それをきみ達に見極めてもらいたい。詳細は羽田の宇野に聞いてくれ。もう一つ、ナザレの動向はスイス本部で掌握するから、宇野や東京の工作エイジェントたちには漏れないようにしてもらいたい」
 
「了解しました。ベストを尽くします」

 この時ブライアンは、シュタインの忠誠心を彼の胸に埋め込まれているチップを介して疑似体験し、確認していた。つまり進化した盗聴だ。

 人は自信に満ち忠誠心が強固である時、視線はまっすぐ前方への指向性が強い。
しかし薄れるに従って視線は下降し、右下方に弱弱しく歪む。逆に反逆心が生じると左上方に向かって視線が強くぶれ始める。

 相手が前に居てもいなくても、前を見るその見方がその人の在り様を示しているが、この疑似体験システムを通して見ると、あたかも、その人その者でもあるかの様に視線や視界が広がり、生命力の脈動までが観て取れる。


シュタインは、信頼できるのが、一目瞭然だった。だが、この様に監視されている事をシュタイン側からは知るべくもない。