白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

CODE 088 2013-04-01 183506

No.088 - 第九章 The show 7

必要悪である

 スイスの地下都市に数十万の人達が住んでいるが、その中の一万人程の科学者達は知的に非常に高いレベルにある。
一般世界の技術は7年前の2013年からほとんど進化していないが、この地下都市では三十年前ほど前に既に核融合や瞬間移動装置が完成し、量子チップにより世界を支配していたのだから、その差は歴然としている。

 そのような科学者たちの中でも指導者たちの上層グループがある。ミューはいつもその中の中間程にいたが、彼らの関心が日本に注がれ、特に関心が人間自身の進化に関わるようになってから、トップの背後に立つ事が多くなった。それはミュー自身が彼ら上層部の思考に干渉した結果でもあった。

 彼女は幼少の頃、遺伝子操作の失敗作として処分されるはずだったが、それを免れた変わり種だ。
 生まれてから3年の間、一言も話さず目も虚ろで集中力にかけ、目立った才能も発見出来なかったからだが、彼女はその処分判断を下そうとしている上層部の者達の思考を読み取り、自分を処分させないように彼らの思考を捻じ曲げたのだ。

 そのミューが今回の銀座襲撃を量子波動装置によってスイス本部からショウがあの状況で何を思い何を決断し、どんな力を使ってその窮地を脱するのかを興味津々に見つめていた。

 数ヶ月前から、戦士トロンの擬似体験によって、量子場がどの様に体や精神に機能するか自分自身のなかで検証してきた彼女は、この技術は人間自身の進化につながる事を確信していた。

だが、その行き先がわからなかった。
 
もし、全ての人間が自分自身のなかで無意識の莫大な力を解放し、他者にも及ぶ力を感情に任せて行使するなら、世界は非常に恐ろしい様相を呈するだろう。

 しかし、この技術をもみ消し、人が依存社会の中で依存度の高い人間を続けるなら人間は創造性を失い支配層の人間を除いて動物や反復を繰り返すロボットのようになってしまう。

 ブライアン閣下は、莫大な資金や政治力などで権力をふるい弱者を食い物にするサド的な人間を嫌い、彼らとその組織を社会から抹殺した。そして激情に走る傾向のある人間を経済の簡易化に恰好をつけた前頭葉に埋め込んだ量子チップによって自ずと命を落とすように仕向ける事で世界に支配体制をしいた。

 その事で、一見世界は平和に見えるが、その支配を崩すような文化や科学的な進化を巧みな策謀と暴力によって抹殺している。

 今回の銀座襲撃でショウが我々に見せたものは、殺し屋たちの行動力の破壊だ。この点においては、ブライアンが気狂いのようにふるまうサド的な人間を社会から抹殺しているのに似ていなくもない。

 だが、異なる点はナザレは人間自自身の進化に方向づけている点だ。

 ブライアン閣下は
 「子供に機関銃を渡す訳にはいかない。だから我々は進化した科学技術を地下に隠し、社会の中の技術的な進化を遅らせる。それは平和な社会の為の必要悪である」
 と言っている。それは確かに反面は正しいだろう。
 
ブライアン閣下はナザレのような人間自身の内側の進化を見て東京から物騒な殺し屋や工作要員、管理集団を撤退させた。もしかしたら人間の進化への素晴らしい世界が進行しているのかも知れない。

 そのように思って、ミューはワクワク踊るような気分で東京周辺の量子場の活性状態を調べていた。

 東京の上空の量子レベルが時折活性しているのは以前から確認していたが、今回の襲撃時に、水が蒸発を始めた様に量子群が活性しているのを観測した。
 
また、銀座ビルに設置した爆弾が羽田に瞬間移動した時の時空間は、瞬間的にこの二つの位置からトンネル状の場が発生している。その発生源を克明に調べてみて、その二つの位置に影響を与えている位置も特定した。
 
我々の技術が、A地点からB地点に物体を移動させる事はできるが、ナザレの技術のようにC点から物体AをB地点に移動させることはまだ出来ない。その点に於いては我々の技術を超えている。

 この内容をブライン閣下が知ると、おそらくこの技術を破壊する事になるだろう。


だから、彼女は誰にも知らせずに、ナザレの科学者に会いに東京に行くことにした。
それは、組織からみると反逆行為である。だが、今の東京の現状は、創造に向かうにあまり有る。

彼女はその可能性に賭け、その日のうちに、自分の今の地位権限でスイスの瞬間移動装置を東京にセットするように部下に指示した。