白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.080 - 第九章 The show 1

面影

 ブライアンが東京麻布の地下深くに設置してある量子場移動装置を利用して移動した時、結社ナンバー2のダイアン他10名程が整列して待っていた。

 「閣下、おひさしぶりです。」
 
「ん、元気そうだな。家族にも変わりはないか?」
 
「はっ、みんなげんきにやってます」
 
「ところで、ミーナは今どこにいる」
 
「最近、毎日のように恵比須のスポーツクラブに通っている様です。おそらく今日もそこにいるとおもいます」
 
「そうか......それでナザレとの接触はあるのか」
 
「いえ、まだありません。我々の戦士たちも遠巻きに護衛していてナザレの様子を伺っている状態です」
 
「ナザレのショウやミヨとは出会った様子はあるか」
 
「いえ、それが最近ショウやミスミヨはクラブに現れていないのです」

 その時、ダイアン に部下からの連絡が入った。

 「閣下、ショウとミヨがちょうど今そのクラブに向かっているとのことですが」
 
「面白い。。。私も行って見る事にしよう。そこまでどのぐらいだ?」

 「はっ、車で20分ほどで」

 ショウとミヨは、ミーナがこのクラブに加入し毎日のようにクラブにやって来ている事を知って、会うのを楽しみにしていたが、彼女が日本の生活に慣れるたころがいいだろうとその日を待っていた。

ミヨは幽体を離脱させスイス上空を舞っていた時に、ミーナに出会っている。その時、ミーナも彼女をビジョンの中で知っている。
 
ショウは体をスイスに時空を超えて移動させ調査していた時に、ミーナを確認している。
 
ミーナの心のなかにはショウが自分の人生に大きく影響していることを無意識が捉えていた。
 
だから三人とも会えることを人生の一大事のように楽しみにしていた。


 初めに到着したのは、ショウとミヨで、そのままミヨのいるスカッシュコートの観覧席に向かい、近づくにつれ三人の心のなかに湧き上がるエネルギーの変化を感じていた。
 
今にも何かが起こりそうな予感がはっきりと感じた彼女は座ってはいられず、棒立ちになってそのエネルギーに心を開きその方向に目を見開いて待っていた。

 ショウとミヨ、二人とも彼女の存在を感じ、真っ直ぐに向かい、ミーナの目の前に2人が現れた時、彼女は抑えることのできるはずもない感情が胸を貫き目の前が涙で霞んでいた。


 今、ショウの目の前に前世において熾烈な拷問の末に置き去りにした前世のミーナの姿そのままの彼女がいる。

 言葉無く、数分が時空を超えて過ぎ去り、多くの思いが交差している間にブライアン一行がクラブに到着していた。

 この状況を見守っていた創造の戦士たちはブライアンの姿を見ると隊列を作る間もなく、その場で直立不動になったため、ショウはその様子を見て、ただならぬ空気を感じ、二人を守るように入り口に向かって目線を止めた。
 
ちょうどそのタイミングがピッタリとあったように、ブライアンがゆっくりとした足取りで目の前に現れショウを認識して二人の目線があった。 
ショウは不思議にもくつろいだ気分で彼を見据え、一瞬を置いていつもの口調で言い放った。

 「ずいぶんと久しぶりだな、ブライアン。」
 
「私は君たちに謝りたいと思ってここに来たのだ」
 「戦いの世界に勝も負けもある。恨んではいない」
 
「相変わらず人の良さは変わらないな、ショウ。それを聞いて安心した。しかしミス ミヨには心から許しを乞いたいと思っている.彼女に話をしても良いか」
 
「もちろんだ。しかしお前の得意な策略はよせよ」
 
「フッ、そんな口を聞くヤツに久し振りにあって、嬉しいよ」

 ブライアンはそう言って苦笑いを浮かべたが、ミヨの方に向いて気持ちを正した。前世から彼女にまともに目を向けて話した事はなく、ブライアンなりに長い時を隔てて持ち望んだ思いがある。
 
ミヨとミーナが寄り添って立っているのを知っていたが、彼には珍しく、二人を考慮する余裕も無くミヨに向かって口を開こうとした。しかしあまりにも身も口も重く、声が出ない。

「。。。。。。」

 どうしたものか!自分自身が信じられない。思わず頭を下げ日本式の礼で自分を取り繕ろい、その時間がずいぶんと長かったので、周りから見ると敬意をもって許しを乞いているかのように見えたが、本人はにじり汗をかいていた。

 身を返し、創造の戦士達の敬礼の中をショウに目も合わせずに去り、その足取りは老人が急いで歩いているかのようで、あまり格好のいいものではなかった。
 

ブライアンの心中はおだやかではなく、心の中で「何という屈辱だ!何という失態だ!」と叫んでいた。許しを乞いた気持ちは嘘偽りではなかったが、いつもの威厳をもった自分は微塵もない。


 ミヨに前世で別れた最後の会話と同じ屈辱が再現してしまった。あの時の自分はまだ不良のような男だったが、今は世界の征服者である。その立場から再会する状況は全く違っている。その状況の中で失態など起こるはずもはずなく、思いもつかなことだった。
 
しかし、この時初めて気づいた事がある。それは、自分は長い間ミヨを介して母親の面影を追っていたのだ。


 帰り道、ダイアンに命令した。

 「明日の午後五時、ショウの治療所がある銀座のビルに羽田の宇野の殺し屋集団に潜入させ、終いにはビルごと破壊しろ」
 
「えっ、ナザレが潜伏している、あのビルをですか」
 
「他にあるまい!」
 
「はっ、分かりました。一気に崩壊させるのですか」
 
「いや、もしそうしたとしてもそうはならないだろう。そのあたりを確認したいのだ」

「なるほど分かりました。戦士達はどうしましょうか」
 
「自由にさせろ!」
 
「つまり、傍観させ手を差し伸べたい者にはそのようにさせるということでいいのですね」
 
「その通りだ」