白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.076 - 第八章 謀略 5

錯綜

 東京は表面上、他の国同様に物騒な騒ぎも事件らしい出来事もなかったが、結社ナザレのメンバー達が前世までの修行を再構築しながら進化し、一般社会から見えない所で集合意識の大きな変化が起き始めていた。
 
スイス地下都市の本部では、科学者集団が東京の上空に、自然にはあり得ない量子変化を起こしている事を、量子探索装置によって感知しその解析が始まっている。
 
この報告を受け、ブライアンはこの変化がナザレの意識的な進化に関係している事を直感したが、すぐに破壊工作をさせずに友好的に接近する手はずを東京に赴任させたダイアンに指示していた。
 
現在、創造の戦士達には、ナザレに接近しメンバー全員にその修行をするように指令している。ブライアンは、その内容は知っていた。ブライアンが100年ほど前に師であったナザレの主事に教えられた修行のであったからだ。

それよりも、その当時、出会ったミヨやショウの事は、彼の心に痛烈な思いを残していた。
その彼らが現代の東京に転生して進化を遂げて居るのだから、大きな関心事は他にあった。
 
若かりしブライアンにとってミヨは、片想いだったが彼の人生の中で衝撃的に出会った理想的な女性で、幼いうちに死別した母親に似ていたせいでもあるが、それ以降女性に気持ちが動いた事はなく、彼女の死後、持ち帰ったひと握りの髪の毛から、遺伝子をコピーしミヨのクローン化したミーナを心から愛そうと彼なりの努力をしてきた。
 
だが、この時代にミヨ当人が、東京に転生しナザレを再結成しその仲間や恋敵だったショウと一緒に生きている。
 
彼らの前世で誰も知らないはずのショウへの残虐的な犯行を、ミヨに唐突に「死んでも許さしません。」と凄まれた言葉を長い間重荷のように背負ってきたブライアンがいる。
 
状況は変わり世界は自分が率いる結社の手中にある今、自分も過去の自分ではない。そのような今、ブライアンの心中に複雑な思いが錯綜していた。

 

羽田の管理事務所では、ブライアン閣下が直接やって来るとの事で、戦々恐々の緊張状態になっていた。数週間前には結社ブライアン、ナンバーツーのダイアンが彼の妻をつれて東京に赴任しており、ナザレに関しての情報収集と統括的な指示を出し始めていた。
 
彼は、ブライアンの科学者集団が生み出した、有能な科学者であり戦士でもあるが、その才能の中にはブライアンの複雑な人間心理を瞬時に判断し行動する遺伝子が生まれながらに活性していた。

そのためにスイスの科学者集団と感情を剥き出しにする管理抹殺集団の両方を扱う事に優れた能力を子供の頃から顕わしていた。
 
そのダイアンが東京に来て最初にした事は、アザミ周辺の徹底的な調査とナザレの技術収集だ。
 
抹殺集団の処理場であったクルーザーの乗組員数十人を、武器を使わず一瞬にあの世に送った首謀者であるアザミはダイアンにとって無視できないし、許せないことだ。

 
ナザレの主事の尋常ではない存在は知っていたが、もし彼の率いる者たちが進化し、人の命運を一瞬に変えてしまうほどの能力に進化しているなら、支配体制にとって途方もない脅威になる。
 
本当なら、彼女を拉致したいところだが、ブライアン閣下の「泳がせておくように」との指示が出ている。だが、彼はアザミが本当にそれほどの脅威なのか、その真価を再度検証してみたかった。

 アザミには,もう一つ気になる事があった。世に知られてはならないスイスの科学知識の認識もありそれを駆使する可能性があることだ。

 その一つの確証に彼女の以前の研究室から量子的な装置の設計図と思われる断片が見つかっている。それがもし我々に危害を加える装置であるなら、早く手を打たねばならない。それと同時にその保持している知識の内容を明らかにしたい。