白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.073 - 第八章 謀略 2

宣戦布告

 創造の戦士たち50人の内ほぼ全員が恵比寿のスポーツクラブに加入し、ナザレのメンバー達を遠巻きに調査していた。その調査は何気なく接近し、その人の体力や癖、会話の内容など細かな内容から、その人間関係や家族状態がどのようであるか、社会的な弱点はないか、仕事や経済状態はどの程度のものかなど私立探偵のように探っていた。
 
しかし、ここに来て本部からトロンの行っている修行を全員体験するように指示が出され、少しずつトロンやナザレのメンバーにもっと接近する必要が生じた。
 
その事でシュタインはトロンを呼び出し、今までの修行に関する知識を皆に説明するよう迫った。
 
「トロン、お前がナザレの修行をしてる事を、本部は知っているようだ。本部からその修行を我々全員が体験するように指令が下っている。呼び出したのは端的に言うと、その内容を皆に説明してもらいたいということだ」

 トロンは心の中でつぶやいた
 「なるほど...あの修行の中に何かある気がしていたが、本部もその技術に関心があるのか、、、それにしてもどうして本部はユキ子だけにしか明かさなかった自分の修行訓を、それほど簡単に知ることが出来たのだろ、、、、」

 トロンはスイスでの訓練では、自分の行動や心の内を仲間に見せたことはない。

この返答にも驚いた様子を見せる事もなくシュタインに即答した。
 
「わかった。この技術は少し入り組んでいるのでその内容をまとめて三日後に皆に報告する。その時間と集合場所を決めてくれ」
 
「んっ、、、そのように手配しよう。もう一つ頼みがある。我々の調査でナザレの人間はほぼ特定してあるが、少しずつ彼らの中に友人として潜入すつもりだ。そのためのちょっとした事故やハプニングを演出する。その事に参画してもらいたい」
 
「わかった」

 創造の戦士たちはその事に関しては非常なほどの訓練をしてきたので、演出は全員呼吸のように理解している。
 
トロンは3日の内に、ショウに直接会ってその是非を問いたいと思った。ショウとは差しさわりのない話をした事はあるが、まだ正面から向き合って話したことはない。
 

ナザレの基本的な技術の一端を自分の仲間である戦士達に漏らすことは、受け入れられているユキ子を始めとしたナザレ、心理の種の人たちに迷惑がかかるかもしれない。その事を正直にショウに話そうと思った。しかしその事が、本部に裏切りに思われる可能性がある。

 急いで、ユキ子に連絡を取りたいが、どこかで自分が見られている可能性がある事を、考え、その日は、出来るだけいつものように、マンションに一人帰り、思いを巡らした。
 

ブライアンは、自分たち創造の戦士に「お前たちは自由だ。これから何が真実かを見つけて世界を創造するように。そしてナザレの人間に会えとも言った。」

自分は偶然にもナザレの仲間に受け入れられたが、ナザレは自分が世界を支配しているブライアン側の一員であることを、おそらくは明確には知らないだろう。

 リーダであるシュタインは「ナザレに潜入する!」と、まだ自分たちにとって善か悪かわからないナザレにターゲットを絞り始めた。おそらく仲間の戦士たちは、その事を可能にするだろう。その時何が自分のするべき事なのか。

自分自身に思いがあり、ナザレにも、またブライアンにも、意図はある。その共通しているところはどこにあるのだろうか」

 
二日後になって、恵比寿のスポーツクラブの帰り計画通りに、地下鉄の電車の中でショウとミヨ、ユキ子とトロンが出会った。
 
今までもスカッシュの休憩時間に話しかけたかったが、以前より監視の目がトロンの心に引っかかり、何も話さないで終わってしまっていた。

 トロントとユキ子が先に乗って、座っていた。そこへ、ドアが閉まるぎりぎりの合間を縫ってショウとミヨが入ってきた。普通二人はミヨのスポーツタイプの車で、移動している事が多いが、ユキ子の意図を組んで、久々の電車に変更したのだ。
 
二人を見るなり、トロンが立ってミヨに座席を譲った。電車の窓に向ってショjウが右、トロンが左に立って向き合う形になり、トロンにとって絶好の機会がやってきた。
 
とっさのことで、トロンは何から話すか一瞬考えた。おそらく時間は銀座まで20分ほどはある。この時間をスカッシュの話でつぶしたくない。かといって自分の現状を説明する程落ち着いた時間でもない。自分を受け入れてくれている現状からいって、自分はもっとショウに自分をさらけ出してもいいのかもしれない。

そう思った時はもう口に出ていた。
 
「ショウサン、私は子供のころから自由を求めてきたところがあります。ショウサンはそんなこと考えたことないですか」
 
このような事を話せる人間は、今までにいなかったし、周りはライバルであり、敵でもあった訓練環境ではそのような弱みを見せることはできなかった。だが、ショウの前ではこの思いが自然と口をついて出てきた。

 「好きだよ、その疑問は。僕も昔から考えていたところでもあるし。僕をショウと呼んでくれ、敬語はいらないよ」

ショウは垣根のない人間だ。

「は、はい」
 
「その疑問だけど、それは自分自身を変容する力にあるのじゃないかな」
 
「僕は肉体や精神の限界に挑戦してきたつもりなのですが、鍛えることと「変容」はちがうのですか」
 
「両方とも、身体を変える事なんだけど、「変容」は無意識パターンを変え肉体を変える。そのパターンが変わると自分の身体だけではなく、社会的な現象からも自由になる可能性があるのさ」
 
「.、、、そこのところ、難しいですね。今の僕には論理的には理解できますが体験がありません。今、ユキ子さんに教わっている量子場の技術はその事に関係しそうですね」
 
「そう。僕の場合この事を理解するのに随分と時間がかかった。量子場を変化させ誰にも迷惑をかけずに個的に変化する事が自由につながってゆくと僕は思っている」
 
「もし、世界が支配的な構造を持っていてもですか。」
 
「そう、もしその世界が極端に支配的であったとして、その支配者にさえ干渉や迷惑がかからない自由がそこにはある」
 
「それは、すごいですね。でも支配者が頑なに、支配する事を望んでいたとしたら、ちょうど奴隷制度のように働く奴隷を必要としている社会であるとしたら」
 
「そういう時代があったね、、、、その時代のような発展途上の社会では確かに支配者は怒るにちがいないな......」

「、、、、、なるほど。わかってきました。自由は結局、物理的な法則からの自由がなの
ですね。ユキ子からもそのように教わっています。それは本来誰も傷けない」
 
「そうだと思う。その事でパラレル世界が開く。」
 
「パラレル世界か。。。わくわくしますね。ショウサンのスカッシュの強さもその辺に理由があるようですね」
 
「まあ、そんなところかもね。10年前は車椅子だった自分から考えると自分でも驚きさ。」
 
「信じられないですね......ひとつ真面目に伺いたい事があるのですがいいですか」
 
「仲間の事かい?」
 
「知っていたのですか、、、私には50名ほどの仲間と一緒にこの東京に来ました。

そのみんなが量子場の技術を習い体験したいというので、彼らに見よう見まねで教えてみたいと思うのですが、よろしいでしょうか。もし条件があるのなら、どんなことでも満たすつもりでいますが。」
 
「条件はないよ。頑張ってほしい」
 
「そうですか! ありがとうございます」
 
「もし、どこかでつまずいたら、遠慮なく聞いてくれ。いつでも力になりたい」
 
「わかりました。ありがとうございます!」


 
あっけなく返事がやってきた。その時ちょうど、電車が銀座の駅に着き、ショウとミヨの二人は人ごみの中に紛れ、トロンの心は広く開け放され、ユキ子の手をにぎり、希望に思いをはせた。

 同時刻にスイス本部ではこの会話の言葉、表情ひとつ見逃すことなく、観察していた。 特に明日東京に出発しようとしているミーナはショウとミヨを正面から捉えた疑似体験映像を観て、胸を高鳴らせ理由なく心の奥から湧き噴き出す感情を止めるのが精いっぱいだった。

 ショウはスイスでブライアン他大勢が盗聴している事を知って、柔らかく彼らにメッセージを送ったのだ。ショウ流の宣戦布告として。

 ブライアンは心の中で「面白いやつだ。」とつぶやき、その事を承諾した。