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No.059 - 第六章 接触 3
策謀
羽田拠点では、銀座のアジトに派遣した「殺し屋達」が戻ってくるのを首を長くして待っていた。
だが、一向に連絡がない。
「ボス、きっと奴にやられたのかもしれませんぜ」
以前、ショウを直接拉致、尋問をしたこの工作員達はショウが、ブライアンと深い関係がある過去生を持つ男だとは知る由もない。
ショウが以前羽田のアジトに向かったとき、正体を明かすものははすべて捨て去っていたので、彼らにはショウの名前さえ知らない。
彼らにわかっているのはリョウコや愛ちゃんと友人関係にある事、恐ろしいオカルト能力を持っているらしい事、同じ様な奇怪な仲間がいるらしい事の3点だ。
「こちらから、日暮里の彼らのアジトに連絡してみろ。何らかの連絡はしているはずだ」
「へい、今すぐに。、、、、、」
いつもこのボスの左横にいる男が、ケイタイを使って事務的な口調で殺し屋達の状況を問い合わせた。
「日暮里に帰っているらしいですぜ。」
「なんだとぅ。電話をよこせ!」
宇野というこの男は頭の切れは良いが、横暴なところがある。
「なんでこちらに連絡しないんだ!」
「それが、仲間割れというか、なんていうか。。。あいつらのボスが部下に目をつぶされたらしく、意識朦朧で今、横になっている状況で。。。」
「部下でもいいから出せ!」
「奴らは縛りあげられているんでやすよ。何を聞いても「あれは事故だったんだ」と叫ぶだけで我々には埒が明かないのですや」
「いったい何が起きたんだ。」
「それが、仲間同士の諍い(いさかい)のようなのです」
「なにぃ?なんで仕事中にイサカイなんかするんだ」
「それが、俺らにもわかないのです」
「、、、、、、、、、、、、、、」
「それじゃ、女達は連行出来なかったんだな」
「へぃ、探したようですが、部屋にはその先生しかいなかったようです」
「、、、、、そうか、縛られている部下を電話に出せるか」
「ヘイ、でも4人とも、殺されるとおびえてますぜ」
「いいから出せ!」
4人とも、彼らのボスの命令で、縛りあげられていた。彼らはボスの容態が回復するとひどい目に合うに違いないと恐怖でいっぱいでいる。
「おまえら! 何をしたんだ!」
「あれは、単なる事故だったんだ。弾みってやつなんですよぅ!」
「それはわかった。聞きたいことがある。部屋に入った時、だれかいたか」
「その先生一人だけで、女は消えていたんです。それよりボスを何とかしてく
れませんか」
「わかった。これからそこに行くから詳しく話せ。いいな!」
「わかりやした。助けて下せぇ。恩に着ますぜ」
工作要員は殺し屋要員より格が上だが、殺し屋世界には彼らのおきてがある。彼らの仲裁に入るつもりはないが、”奴”がどのように彼らを仲たがいに仕向けたのか調べる必要があった。もし、達者な口で殺し屋達を陥れたのならいいが、わけのわからない力を使ったとなると、自分達に降りかかる問題は想像を超える。
その先生が、「あの時尋問した”奴”で。殺し屋どもに奴は”何か”したに違いない」と確信していたが、殺し屋たちに聞いて見ると何もしていないという。
前回、奴が「お前達腰は痛くないか」と言った瞬間、自分たち4人の意識が同時に消された。この世界に超能力のような力をもった男がいるのか、それともあれは催眠術だっ
たのか。今回も、そのような力を使ったのか、それとも殺し屋どもの単なる仲たがいなのか。
そのような事を殺し屋どもから聞き出そうと向かったが、この工作員が日暮里のアジトに着いたときには、彼らのボスが意識を取り戻し、ふらつきながら、そのむかついた感情で彼ら全員を射殺してしまっていた。
「なんて奴らだ!ボスをよべ!!!」
この殺し屋要員組織は、部下の反逆に対して独断で裁定をする事が出来る権限を持たせてある。
その判断がボスの勘違いであったとしても、激怒で部下を殺してしまっても、だれも文句を言わない。
そのような社会であるから、部下達が自分達の身の危険を感じて、時には事故を見せかけてボスを殺してしまう事がある。それがばれると上の組織から一掃されるが、バレないように犯行に及ぶ事も多い。
だからこの殺し屋達のボス格の者達は、いつも子分達に気を許せない状況にある。今回の件はこの結果だろうと殺し屋の上層部は見ていた。
「お前に依頼した仕事はどうなった?」
「部下たちの不祥事でこのような事になってしまった。もう一度やらせてくれないか」
「やるといったって、そんなザマで無理だろう。。。。。。聞きたい事がある
んだ。そこにいた先生は何か妙な事を口走ったり、抵抗したりしたのか」
「いえ、ただ探したいなら探せと言って立っていただけで、何もしてません」
「そうか、、、、、、、、、、、、、。お前、。。。その目を治しにその先生のところに行って治療を受けてみるか?」
宇野というこの男は横暴なところがあるが、策略には長けている。
「奴の治療所をぶち壊したのに、治療してくれますかねぇ」
「それは、わからんが、何が起こるか我々も知りたいのだ」
その時、スイスのブライアン本部でも、この銀座のアジトに注目し始めていた。
その理由の一つは「創造の戦士」の一人であるトロンがつき合い始めたユキ子がいつも、その治療所に帰るのをスイス本部の量子場解析装置が確認し、その中にユキ子が入ってゆくと、すこし経って量子場解析が不能になる。