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No.056 - 第五章 対峙 13
ミヨの遺伝子と共鳴する結界
「今までどこでプレーしていたのですか。」
トロンが「スイスで少し、、、。」
「私は身体を使う事にとても興味があります。トロンさんの身のこなしは無駄がないというか、勉強になります」
2人の心は不思議に深いところで繋ぎあった。
チップ管理されていないのはお互い気がついた。普通チップ管理されている人の目はどこかいつもうつろだが、二人の目はクリアーでくっきりしている。
この2人が一緒にこのクラブを出た。トロンの方から「食事はもう済まされましたか」と誘った。
スイスから、ミーナとブライアンはトロンにそのスポーツクラブで何が起きているか、わからないまま、出てくるのを待ち続けていたが、この二人が一緒に仲良く出てきたので、ミーナはとても興奮した。ミヨにいつ彼ら創造の戦士達が出合う事になるのか、気持ちがいっぱいになっているので、ひょっとしてトロンと一緒の彼女はミヨかもしれないと思ったからだ。
「ブライアン、ミヨの風貌は生れ変ったとしても大体わかると思いますが、どんな能力や雰囲気を持った人なの?」
「ミーナ、ミヨの性格や能力に関してあまり知らないんだよ。ただ理知的で優雅な身のこなしを思い出す事はできる。
トロンと一緒に出てきた彼女は身のこなしはきれいだけど、優雅さという点ではミヨの生まれ変りには見えないな」
そう言ってブライアンは技術者たちに彼女の波動を量子場解析し、ミヨの遺伝子パターンとの共鳴がどのぐらいか調べるように指示していた。
ミーナとブライアンには、トロンの状況が、その周りや彼の内側の感覚からも伝わってくるが、ユキ子に関しては外側の姿かたちとその声が映画を見るように伝わってくるだけだ。
すぐに、技術陣が報告してきた。
「ご報告申し上げます。
トロンと一緒にいる女性の、ミス、ミヨとの遺伝子共鳴率は1パーセント以下の結果になっておりますので生れ変りの可能性はないと思われます」
「そうか。わかった。もう一つ、東京のスポーツクラブの量子場解析は終わっているか」
「急いで調べているのですが、まだ、判明していません。もう少し調べてまた報告します」
ミヨの純粋な遺伝子を受け継ぐミーナの場合、その共鳴率は99パーセント程であり、ミヨの遺伝子は現在東京に送り出している「創造の戦死」50名ほどを含む多くの若者に使われているため、中にはミヨの遺伝子共鳴率が30パーセントにも達する者もいる。その点から言ってもユキ子にミヨの生まれ変わりの可能性はない。
遺伝子操作に用いられている遺伝子は、天才的な科学者たちのものも多く使われているが、もう一人、あらゆる局面で使われている遺伝子がある。それはブライアン自身の遺伝子だ。
そのため、ブライアンが若者の中の特に心熱き「創造の戦士」たちを見守る目は自身の子供のようなのだ。
それにも増して、彼らの遺伝子の大きな要素を占めているのが、ミヨの遺伝子なのだから、その子供達はブライアンとミヨの合作の要素が強く、ミヨに触れた事もないブライアンが彼らを見る目は「ミヨと一緒に生きている」そんな気持ちなのだ。
数分もしないうちに技術部から連絡が入った。
「この事に、関連するかどうかわかりませんが、ご報告する事があります」
「んっ?」
「東京のスポーツクラブの量子解析についてです。このスポーツクラブに張り巡らされている場は、人為的なものである可能性が高いと思われます。この量子場とミヨの遺伝子が共鳴しているのです」
「なに!」