白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.053 - 第五章 対峙 10

くすぶり燃えている

 スイスの地下都市の中、ミーナの様子が今までとは違っていた。彼女は今までに感情を表に出した事は一度もなかった。
 
このような湧き出す感情は想像だにした事がない。心が大きく動揺しているが、彼女の持ち前の澄んだ意識がそれを静かに見ているところもあった。
 
始めの頃は、うろたえる自分がいたが、だんだんとその感情の中に人生の意義を感じさせる熱さがあることを感じ取っていた。
 
地下都市の内側の科学者居住区の住人達は、遺伝子操作によっ受胎される事が多いため、優秀ではあるが、天才的な人間はいない。ここでは恋に心を燃やしているような人間は皆無に等しい。
外側の工者居住区では激情の中で生きているが、サディスティックな性向を多く持った者たちで、その欲情を仕事や外側社会で満たしている。彼らに恋やその心の熱さは感じられない。

 ブライアンにカリスマとしての凄さを感じてはいるが、このような感情的な炎として感じるものはいない。

ミーナはこの居住区の中の人間を観察し、彼女なりに分析した。
この心をかき乱す、思いの中に大切なものがある事を直観していた。

 彼女は疑似体験画像によって創造の戦士たちが、東京で過ごし体験している世界を毎日、食い入るように見いり、
 「この中に自分と同じ遺伝子を持つミヨとショウが生きている。この二人はこの東京で出会っているのか。どんな生活をし、どんな状況の中で生きているのか」

 その事を思うと心の深いどこかが震え、眠っている何かが目を覚まそうとするのを感じていた。

 ブライアンは仕事を終えると、疑似体験画像をミーナと一緒に見るのが、ここ最近の日課のようになっていて、彼女がこの装置にとても興味を持ち一日の半分以上をここで過ごし、残った大半も日本の歴史や最近の状況を調べているので、その話相手になるのを楽しみにしている。
 しかし、ブライアンの気持ちの中にはちょっとした不安があった。
 それは、彼女の興味はミヨとショウにあり、創造の戦士50人がその行動の中でいつ彼らに出合うことになるのかの一点だったからだ。

 生まれて間もない頃から、いつも近くにおいて暮らしてきた彼女が、今始めて社会に興味を感じている。今まで一緒に外側社会を旅した事は幾度かあったが、これと言って興味を示さなかった。

 世界を楽しんではいたが、それは物めずらしげに動物園を見ているような感じだった。
 それはこの地下都市の中の科学者区に住んでいる住人の共通的な見方だから普通なのだが、今回はまったく異なっている。
 
この地下都市の中の居住空間から外側世界の生活を見ると、まるで100年ほど前の人たちに見える。

 例えば世界のどこの都市に行っても照明器具が光を投げかけているが、この地下世界では壁自身が光を放っていて照明器具らしきものはなく、移動は通路そのものが適度の早さで移動し、わずかに風のような音がするだけで、けたたましい騒音と排気ガスを出して走る自動車の類はない。

 それにも増して、外界の天候の変化によって、身体に影響を受けている状態は彼らには見るに見かねない。地下都市の中は完全に温度や湿度空気の成分をコントロールしているのだから。
 
では、室温や湿度を一定な無菌室のように快適にコントロールされているのかと言うとまったくそうではない。そのようにすることも出来るが、そのようにすると身体は非常に弱くなる。
 
そのために必要な身体へのストレスを考慮した室温調整や成分を創りだしている。この点に関しては科学者集団がしのぎを削って研究し、人間の身体能力、健康管理に関しても遺伝子操作の技術をはじめとして外側社会の比ではないほど進化している。
 
この地下都市を出た事がない人でも、外界世界に出た場合でも健康状態を乱す人はいないだろう。ここでは病気を治そうとする時代遅れの医学は当の昔に卒業していて、あらゆる病原菌やストレスに対して健康でいられる能力造りに研究の目が向けられているからだ。
 
外側社会を支配するためには、彼らにストレスが病気や不幸の原因であり、そのストレスをどのように避けるかを講釈し信じ込ませるか、解熱薬や自律神経や精神薬を摂る必要を宣伝するだけでいい。そうすれば彼らの身体は弱くなり、薬がなけれ生きられない弱さを常に持ち歩く。
 
どんな反骨精神を持った人間でもこの罠にはまると薬物を独り占めにしている現代医療には勝てない。
 
単純にストレスを悪者にし、そのストレスを避け逃げるように仕向け、作為的なストレスを与えると意図した行動を起こす事になる。
 
それは金融支配を企んでいたユダヤ結社が長い間かけて仕組んだ人類への謀略の一つだが、ブライアンはそのトリックを、ユダヤ結社を崩壊させた後も外側世界に対しては変える事はしなかった。

 この地下都市は居心地の良い空間ではあるが、人間の本能を甘やかし精神を弱くするところではない。かと言って厳しい訓練をさせてもいない。
 
科学者集団の人間生理学者達に求めているのは、健康はもとより強さであり若さ、美である。しかし格闘系のような強さではなく、環境に対しての生命力の強さであり、見た目の若さや美ではなく、人間の能力的な若さであり美にある。
 
この事項はこの地下都市においては本質的なことだ。その成功を治めていたので、この地下都市には病気らしきものがない。もしこの地下都市の中で伝染病やら病気が蔓延すると死活問題になる事を予測してあらゆる予防手段が講じられているが、この対処は消極的なものではなく、非常に積極的なものだ。
 
そのせいもあってこの地下都市から見ると外側社会はあまりにも貧弱な人間達であふれているように見える。
 
外側世界は薬を求め、あらゆるストレスから逃げまどうような人間であり、自身の身体はもとより精神にさえ信頼できない。そのような人間達に創造の何が理解できるのだろうか。

 外側社会に住む彼らをチップによって支配するのはブライアンだけではなく、ここに住む住人のほとんどが当然の事と思っている。
 外側社会のくだらないトリックなどに翻弄される人間はそのようにしておけばいい。
これはブライアンが放った抹殺、殺し屋集団の手に落ちるような人間はナザレの結社であっても彼らの運命であると考えたのと同じだ。

 ニーナも外側社会の様々なトリックについては、ユダヤの結社が崩壊する以前から見ていて知っている。だからあまり社会や人間には興味がなかった。だが太陽と月が地上に織り成す自然の美やあどけなく生きている動植物には本能的には興味があった。
 
ミーナはショウの過去生での最後を知って初めて、自然の美を見るように人間にも興味を持った。人間の感情を伴う熱い心に自身の本能的なところが揺さぶられ、その鏡としてのミヨやショウが生きる世界に心を寄せ始めていた。

 ミーナにはいつも考えていた事がある。
 
「私はだれ?」

 「私はクローン化によって生まれた者で、男性と女性の愛によって生まれた者ではない。でも内側では何かがくすぶりながらも燃えている。私はそのくすぶったものを燃やすに値する者なのだろうか。」