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No.049 - 第五章 対峙 6
擬似体験
スイスの山奥地下400メートルほど地下都市の中心部付近に広大な空間を占有した優しい光に包まれた居住空間がある。そこにブライアンとニーナが一緒に住んでいる。
その中の一室に、他の居住者が観ている立体テレビよりも高度に進化した立体映像システムが設置され、ブライアンとニーナは創造の戦士50人ほどの行動やその周りの映像を観てくつろいでいた。
一人一人の視線から観た映像はもちろん、角度を変えてその周りの状況を自由自在に観る事も、彼らの身体の状態まで知る事が出来る。
それは創造の戦士達の身体から世界を観、そして感じる疑似体験そのものだ。
彼ら「創造の戦士」にはこの量子解析装置と振動解析装置によるこの疑似体験システムの事は伝えてはいない。
彼らは創造の戦士50名は東京の拠点、羽田にも設置してある量子瞬間移動装置によって東京にテレポートされ、ブライアンとニーナはその映像を観ながら彼らの門出を祝っていた。みんな生き生きして希望に胸を膨らませているのが、自分の身体のように感じられる。
ニーナは、その映像を感じながらその横にゆったりとしたソファーに座っている
ブライアンに話しかけた。
「みんな、さっそうとしているわね。私も行ってみたいな」
「ん。みんなが地上の生活に落ち着いた頃、一緒に行って見よう」
「本当に!うれしい。また二人で冒険が出来るんだ」
「私も、二人で世界を冒険するのが長年の夢なんだよ」
「その時は、誰にも見られたくないな」
「もちろん、誰も監視している者はいないよ」
「でも、ブライアン、私達は彼らを、監視しているわけではないけど、それをみんな知らないのでしょう。」
「確かに、彼らにそれを伝えていないけど、それは彼らに意識してもらいたくないからだよ」
「でもね、ブライアン、誰かに見られているとすると、嫌な感じよ」
「それは、理解しているよ。でも考えてみて欲しい。彼らは私から見ると赤ん坊が歩き出したぐらいの感覚なんだよ。 世界は安定していると言っても、まだ反逆分子はまったくいなくなったわけではない。そんな中に入ってゆく彼らを見守るのは親の役目であるし、それに親はその子供の成長を見守る中で親としての成長もしようとしているなら、どこに問題がある? 私はそのような思いで観ているんだよ」
「ブライアン、ごめんなさい。あなたが100歳を越えた人生を生きていたのを
忘れていました。。。親ってすばらしいわね。。。。。」
「ミーナ、新しい身体になったのだから、ハネムーン旅行に出ようか」
「いつ?何処に」
「彼らの状況を見て、決めよう。近いうちに。東京はどうかな。」
「うれいしい!それじゃ、あらかじめ東京を勉強しておくわね」
「それは、いい。このシステムが役に立ちそうだね。」
「ここに、ミヨさんやショウがいるんだ、、、、、、、すっごい、楽しみ! ねえ、ブライアン、聞いていいかしら、恋敵のショウの事」
「どうしてだい」
「ミヨさんが恋した人はどんな人かなって、いつか奴はすごい奴だったと言ってたわね。どんな風だったの?」
「それは、あまり話したくない」
「どうして?クローンで生まれた私にとって、唯一母親のようなミヨさんの事を聞いてもあまり教えてくれないし、ショウの事も恋敵だったと言うだけで、教えてくれない」
「それは、知らないほうがいいかなと思うからなんだよ」
「ブライアン、私はもう子供じゃないのよ。どんな事も受け入れられるから、教てくれない?」
「わかったよ。正直に話そう。ミヨは僕にとって子供じゃない。未知の生涯をかけた女なのだから。そのほうが私も過去の重みが軽くなるかもしれない。。
。。。。