白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

CODE 043 2012-09-13 151330

No.043 - 第四章 接点 15

わずかな軋轢

 科学者居住区と工作員居住区は明確に区分されていて、工作員達は都市の中心に位置する区域に入る事は出来ない。壁はないが、埋め込まれたチップがそれを許可しない。
 

l科学者居住区に住んでいる住人の子供達は、親と一緒に住んではいない。親達は自由に子供達に会い遊ぶ事が出来るが、子供達はあらゆる可能性を伸ばすために理想的な教育と遊びの中にいる。

工作員居住区では子供は親と一緒にいて親やその教育機関によって社会を知ることになる。
 恋愛はどこでも自由で彼らに干渉はしていないが、この地下都市ではそれほど男女関係は活発ではない。科学者居住区では科学研究の虫が多く、また遺伝子組み換え技術によって生まれているものが大多数なので、恋愛にあまり興味を持たなくなっている。
 
戦士居住区では隣の人間がサディスト傾向を持った人達なので魅力を感じないことが多く、どちらかというと彼らには恋愛はまどろっこしい。それよりも外世界で欲求を満たす方が楽しい。

通常世界に警察はいるにはいるが彼らにとって何の拘束力も持たないのだから、早く外に出て獲物を好き勝手に弄びたいと思っている。
 
子供達は彼らが12才以上になった時、どちらの居住区に住んでいても外世界の工作、量子科学の両方を学びたいと希望すれば一定の期間その試練を受ける事が出来る考慮がある。だが、この難関を超えるのは難しい。
 
戦士の子供に生まれた子供達にとって激情は生きている証であるが、天才教育を受けた高性能な子供達には激情は辛すぎる。また激情の感情が知性の発展を拒み、高度の知性が激情の感情を抑圧しめまいさえ起こす始末だ。

 しかし、稀にこの双方の難関を越えた者達がいる。 特に1980年以降新しく生まれた科学者達の子供達には遺伝子組み換えの高度技術が使われたため、肉体的にも知的にも、また芸術的な能力にも優れている者たちが生まれ、少数だが50名ほどの若き男女がこの難関を突破し活躍の場を待っている

彼らはみんなブライアンのようになりたいのだ。教育レベルは世界の一般レベルをはるかに超えているだろう。クローン技術が完成した1980年、瞬間移動の装置が世界に設置された1990年、ブライアンがクローン体に移動した2000年、そしてユダヤの金融を乗取って世界にチップ支配を完成した2013年ブライアン率いる新世界は非常なスピードで進化しているからだ。

 彼ら優秀な遺伝子を持った者達が、世界の所有者として広がって行く日をブライアンは夢見ている。彼らは人を虐めて喜ぶようなサディスト的な人間達ではないからだ。その前に人類を完全なイエスマンのごとく支配する必要があった。

 2017年の現在、その目標はほとんど達成している。

 一方、世界の国々は、以前のように企業や中小企業がしのぎを削り、テレビや新聞も一見何の変化もないかのように思われ、消費生活も同様に続いている。
 
異なっているのは、脳の中の思考が制御されているため徐々に感情が消え、性欲が消えている。世界は一見平和であるが、感動する感情が消えつつある。

 ブライアンはサディストのような性向を人間の本能から排除するのに成功しつつあり、少しずつこの天才達を世界の所有者達として送り出そうとしていた。
 
ちょうどその矢先、結社の主事が部下を従え東京の一拠点に現れた。この結社ナザレは宿命の敵であるのはブライアンが一番知っている。時を超え結社結成する2017年がやってきた事を燃えあがる炎が心の底で訴えている。
 


 ニーナはブライアンに聞いた。彼女はこの時37歳。とても明晰で美しい女性になっている。
 
「ブライアン、私の遺伝子母体の女性もこの世界のどこかに生まれ変わっているのね。」
 
「おそらく、そうだと思う。でも覚えておいてくれ。私の女性はミーナだけだ。」
 
「そう、でも会いたいな、母親を思う本能のような感じかな。でもブライアン、コピーの私より本物のミヨさんの方がいいんじゃない?」

 彼は少しうろたえた。その微妙な表情を彼女は見逃さない。
 
「ミーナ。きみはコピーなんかじゃない。僕も僕自身のコピーじゃないんだよ」

 「ごめんなさいブライアン、ちょっと嫉妬しちゃった。」

 二人の間にわずかな軋轢がある。ブライアンの心の中の唯一、その力の及ばない世界がここにある。