白雲の道治療院

白雲の道治療院は、鍼灸術と量子場調整を用いて心身の健康面の向上、さまざまな症状や機能の向上、能力の増大に努めております。

白雲の道で美しく健康な体を!

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No.027 - 第三章 展開 9

拉致

 私には暴力的な武器は何一つない。今のところ、せいぜい逃げ足が速いぐらいの事だ。しかし最近、思うところがある。
 
私のオーラ空域の中に入った人の症状や病を治すのは今の能力として一瞬だ。
それは裏返して見るなら悪意を持った敵が私のオーラの中にはいったなら、一瞬の内に脳の梗塞や心臓に発作を起こし、倒す事が出来る。

 今までそのような事を使おうとした事がないが、いずれ使う必要が出てくる事は考えていた。だがその時、同時に自分自身にも同等の力で、それらの症状が襲いかかることになる。その時にどれだけ耐えうる自身の能力と回復力があるのか。それは未知の事だ。自分自身も倒れてしまう可能性があるが、ここに技術的な一定の境界線があるに違いない。

 相手が完全に死に至る程の力を使うなら、自分にも死に至る力が及びこちらの意識が消える。しかし私には十分に耐えうる程のストレスを相手に与えるなら、敵に対してちょっとした武器になる。そのことを調べるには良い機会かもしれないと思った。
幸い自分には外側世界を認識さえ、できなかった長い暗い時間の中で自身の意識を守ってきた経験がある。

 敵陣に向かうタクシーの中でいろいろ考えた。もし、死が自分にやってきたとしても、また生まれ変えればいい。だが、この生はおそらく今までで最も価値がある戦いの生であるだろう。ならば、今回は絶対に過去の轍を踏まない。しかし、どのように自分の力を使うべきなのか。
 
 言われたとおりに、JALビルの前で手を高く上げて待った。敵はすぐに黒塗りの大きなヴァンでやってきて、素早く後部座席に乗っていた二人が降り、手早くポケットに入っている物を取り上げ、「乗れ」とふてぶてしく指図をした。少しためらったが、その指図に従い両脇にその二人が乗り込む形で走り出した。前日私達を追跡していたあの3人と助手席に乗っている初対面の男だ。

 おそらく、左右に隣に私を挟むように座った二人の男が、サヨ子の夫を暴力を使って脅し、首をナイフで切りつけたのだろう。その事が実感できるほど彼らは、冷酷な動作と風貌をしている。
 

車が動いている間、先に計画していた事を実行した。
彼らの量子場を調べてチップが前頭葉に埋め込まれている事を確認し、次に彼らの腰椎の運動に少しだけ干渉場を創った。4人とも私のオーラの領域に入っているので容易にこの計画は成功した。自分の身体を観て見ると私の腰椎にも同様の場が発生している。

 彼らの場から意識を私に戻し、この跳ね返って来た干渉場を消し去った。この間数分だが、この結果、私が、彼らに対してどの程度有利に働くか試してみようと思ったからだ。

 車を降りた4人は皆共通してその場が保持されているのを,確認したが、兆候はそれぞれに微妙に異なっている。
前部座席に座っていた二人は座席から降りるときに重いしぐさが見える。両脇にいた二人は彼らのビルに入っていく間に何度となく、腰に手を置く動作を確認出来た。私は私自身の力によって消し去ったはずなのだが、多少の腰の周りの違和感として余韻が残っている。おそらく彼らの場が私と共鳴しているのだろう。

 ならば、彼らを脳の梗塞や心臓発作に誘導すると、自分に対する干渉を消し去ったとしても、こちらのダメージをゼロには出来ない。やはりまだ自分の力は十分ではない事を感じたが、この力しか今の私が彼らに対抗できるものはない。

 彼らのビルは赤茶けた6階建で、地下は5階まで重厚な構造になっている。
その事はミヨの内側の視界から知らされていた。地上階は様々な商品の展示品が並んだ
ショウールームや分けのわからない会社が入っているようで、敵との関係は不明だ。

 愛ちゃんやサヨ子、リョウ子は地下3階にいることはわかっていた。私は地下5階の殺風景なコンクリートがむき出しの部屋に連れて行かれ、そこには電子装置やコンピュータが数台置かれているテーブルがある。その前に映画でよく観るような腕を拘束する肘掛がついた固めの椅子がある。その椅子に座るように両脇から後部座席に乗っていた無骨な大男が腕をつかんで私を誘導した。

 車の助手席に乗っていた、ちょっとはましな風貌をした男が、テーブルの前に座りぶっきらぼうに話し始めた。

 「なぜ、ここに連れて来られたか知っているか」

 「知るはずないだろう。。。彼女達は何をしたんだ。」と、とぼけた。

 「教えてやろう。お前の友達の一人が、昏睡状態から回復したようだが、その回復状態が自然には考えられないので、それを調べているのさ」


 「今、彼女の身体を研究材料にしているのか」

 「それもあるが、今までにこのような例がいくつかあって、その人間を調べたが特異体質の問題ではなかった。もう一度同じ状況に合わせたが、みんなすぐに死んでしまったからな。彼女もおそらく、そんなところだと思うが、その前にお前たちを調べたいのさ。これは我々の仕事だから悪く思うな。」

 「彼女達に何かしたのか。」

 「いや、まだだ。お前たちが、あの女に何かしたのか聞きたいのは、こちらなんだよ」

 「なるほど。。。何もしていないがな~。」

 私は嘯いた(うそぶいた)。

 「ところでお前の名前はなんて言うんだ。お前の友達に聞いても名前さえ言わないで、がんばっている。お前の持ち物の中には3万円の他は何もなかった。ケイタイもカード類もみんな捨てたんだろう。素性を知られたくない何か訳でもあるのか」

 「はっきりしている。お前達に今後付きまとわれたくないからだ」

 「なるほど。しかしここから無事に生きて出られると思っているのか」

 「出られないなら、どうして話す必要があるんだ。」

 「今後の調査の事もあるから話してもらいたいのだよ。もし、こちらの聞きたい事に正直に協力してくれたら場合によっては、友達も一緒に帰してやってもいいぞ」

 悪党のいつものセリフだ。彼らをどのように挑発するべきか考え、自分の周り1メートル以内に4人が同時に入る機会をうかがっていた。

 「本当に帰してくれるなら、質問全てに正直に答えよう。その前にお前達の事情を話してくれないか。本当は、何を私から知りたいのか。もし私が何も話さないなら、何をするつもりだ。私はお前達の求めにどうしたら良いか皆目見当がつかないんだよ。私はお前達の世界に迷惑をかけるような何かしたのか」

 「手っ取り早く話してやろう。この部屋は見ての通り、拷問部屋だ。お前が話さなくても薬物や科学装置がそろっているので心配はしていない。お前の友達も今頃はこの装置にしゃべらせられている。私達の心配は何もない。時間も拷問の楽しみもいっぱいあるので、ゆっくりやらせてもらうよ」

 「その拷問は、私も楽しみだがその前に、何が一番知りたい事なのか初めに言えないのか?おまえたち何か勘違いしていないか。
私はおそらくお前達の知りたいことは何も知らないぞ」

 「理屈がわかるようだから、話してやろう。お前の素性に興味があるわけではないんだ。世の中には不思議な能力を持つ人間がいる。例えばお前の友達のような死ぬはずの人間が、生きかえったのはどうしてなのか調査しているのだ」

 「ではどうして私がこの拷問部屋にいるんだ。彼女が生き返って悪いのか。それが私とどういう関係があるんだ」

 「ひょっとしたら、お前達の誰かが治したのかと思っているんだよ」

 「なに!私達がどうして治せるんだ。私はキリストではないぞ」

 「それをこちらも知りたいのだよ」

 「仮に、私がキリストだとして、どうしてそのような人を拷問にかけようとするんだ。それにもし、そうだとするなら危険なのはお前達ではないのか」

 横で聞いていた運転していた方の男が、腰の辺りの辛さをかばいながら業を煮やして発言した。

 「そろそろ、拷問を始めて見ようじゃありませんか」

 「そうだな、そろそろ始めよう」