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No.017 - 第二章 結界 4
監視網
いつもの、バーで見る彼女は、一風変わって見える。ワインを片手に猫のように、目を半開きにして感覚を最大限に開いている不思議な感じだ。
「ショウ、残念だけどこのバーは今日で終わりにしなければならないようです
ね」
その言葉の余韻から私も、内側の視覚を拡大して察知した。このバー全体の場がゆっくりと時計回りに回ったり、止まったり奇妙な量子の運動をしている。周りに直接的な目に見える敵はいないのを確認した。
二人はゆっくりとワインをいつものように飲みほし、いつものように、その場を出て、午後9時ほどのまだ酔いの口の居酒屋や大衆レストラン通りを横切って帰った。
その帰りの中でミヨは、その能力を使って、敵が監視システムを稼動して、監視していたとしても、私達のアジトを知られないように二人の空間に結界を張り巡らしていた。
彼らの監視システムはどの程度進歩しているのか。あのバーはなぜ監視体制が敷かれていたのか。私達の存在を彼らに知られたのか。アジトに帰ってから二人でいろいろな観点で調べてみた。
「ショウ、あのバーにはいつごろから寄っているの」
「僕が大学院に入った頃からだからもう、8年ほどになるかな。ミヨに会った2,3年前からだと思うよ」
「そう、その間に何か変わった事はなかった?」
「変わった事って?たとえば喧嘩騒ぎや刑事事件があったとか?」
「その事もだけど、変わった人は来なかった?」
「いつも一人で静かに飲んでいたので、あの店の情報は全然ないよ。。。。変わった人と言うと、、、そういえば、ミヨに会う一月ほど前にギョロメのオヤジにあったぐらいかな」
「えっ、その人は何か変わったところはなかった。」
「何を考えているか当ててやろうかと、話しかけてきた親父だよ。あれからまた遭えるかと思って毎日ここに来て待っていたけど現れる事はなかった。」
「その人のことを思い出してくれる。」
「。。。。。。。。。。。。。。。。。。帰りの姿はこんな感じで去っていっ
た、、、、そうか。、、、、、、、、、」
「。。。。。わかりましたよ。この方は私も以前、探していた結社の主事です。結社の不良分子が血眼になって探している最重要人物で、敵は彼の足跡を追っているのです。」
「そうか、そうだったのか、僕も今そう思った。つじつまが合う。今思うと、僕はあの親父に会った時から、人生が変わったんだよ」
「おそらくその時、彼はショウの何かを修正して行ったのね」
「そうか、あのバーに彼が現れた時、自動的に検知するようにセットされていたか可能性があるな。」
「彼らは私達の波動パターンを知っているのです。」
「なるほど。。。でもどうして6,7年も前にここにいたことを今頃知ったのだろう。前回一緒にあのバーに行った2週間前は何もなかった」
「彼等に技術的な進展があったのか、なんらかの方法で支配体制を拡充しているのかもしれませんね。調べてみます。」
「今以上に、十分な注意をする必要があるようだな。これからは僕もミヨの探索に加わるから、何をどのように調べるのかを教えてくれ」
「わかったわ。二人で手分けもしましょう」
「では僕もいよいよ戦士ということだね」
「彼女は私の目をまっすぐに見ながら、ちょっと心配そうに、うなずいた」
「前世で僕の去った後、私達の結社がどのように変化進展したか、前に聞いた事があるけどその後、技術的な進展はあったのかな。そのあたりの事話してくれないか。」
「それが大有りなのよ。今までショウの能力向上の邪魔になるといけないと思って黙っていましたが、いま、すべて話します。そして急いでその技術を思い出してマスターしてほしいのです。」
そう言ってミヨは静かに話しはじめた。
前置きから話しますね。
鳥族は大空を自由に飛行する羽があり、多くの動物には牙や毛皮の暖かさなど人間よりもはるかに優れた身体に密着した道具をもって生まれます。
人間には優れた脳があると言いますが、道具としての身体に密着した道具や武器らしいものは何もないのか。と言う事ですが、私達、結社の先輩達は発見したのです。
人間が生まれながらに持っている身体に密着した道具、それは身体を取り巻くエネルギーの渦、つまり一般に言うところのオーラである事を。このエネルギーの渦は微妙な光を放つ量子の群れであり、その人の意識と一体になって運動しています。
つまり、その渦のように運動している量子を意図的に回転する事で鳥が空間を自由に飛行するように、人間は時空をジャンプする事が出来るのです。つまり瞬間的な移動が可能になります。
その知識と技術は彼等不良分子にも知られてしましました。しかし、彼らは意識の面での実質的な力がありません。その知識と技術を使いこなすためには真実を貫く真正面を向いた正直な心と地球を包み込むほどの愛が不可欠なのですから。
でも、かれらはこの技術をテクノロジーによって、ある程度の成功を収め、それを世界から隠しています。その一端をチップによって現時点で悪用して使用していますが。
その技術は本来、広大な時空世界に人類を拡大するものですが、一歩間違えるととても支配的なものであり、魔的なものになります。それはちょうど原子力が莫大なエネルギーを人類にもたらしますが、一歩間違えると原爆で多くの人や文明を葬り去る事になるのと同じです。
それは大変な事ですが、この量子のテクノロジーはそれを遙かに上回っています。身体だけではなく意識を知らずうちに破壊され、支配的にコントロールされるからです。身体が破壊されるだけなら、生まれ変わった来世で新しい出発が出来ます。しかし意識が破壊されるとそうは行かないのです。
「つまり終わりと言うわけか」
「そうです。人間の創造性がその根から破壊される事になります」
「他にこの技術を知ったグループや結社はないのだろうか」
「その当時たくさんの秘密結社がさまざまなれレベルで暗躍し模索していましたが、この事を知り、技術展開したのは私達の結社だけです。」
「責任重大ってわけだね」
「そうです。負けるわけには行かないのです」