院長が解説する30の症状と施術
当院の岩尾院長が、さまざまな症状とその要因、そして回復のための施術の指針を解説していきます。
骨盤の負担
犬や猫などの四脚動物はもちろん、サルや鳥、魚類を含めた動物も、すべて腕に当たる部分を移動手段として使っています。人間だけが2脚で全体重を支え、移動し、腕を歩くために使うことはしません。そのために人間の骨盤には多くの負担がかかっています。
この特異な人の骨盤について、動物および他の器官との関係性からお話してみたいと思います。
動物と人の骨盤の違いは、犬や猫が後ろ足で立っているところを想像してみると判りやすいでしょう。
彼らは足が伸びきらず、ガニ股であるのに気がつきます。これは骨盤が水平に位置しているからです。人間に一番近いサルの骨盤は、直立してはいませんが垂直に立っている人の骨盤と、犬や猫のそれの中間に位置します。
人の場合、普通、真っ直ぐに立っていますが、骨盤が開いてきますと犬や猫の動物がそうであるように、骨盤と一緒に体全体が前傾してきます。
動物のように手で支えるわけには行きませんので、顎やお腹を前に突き出したり、足をガニ股にしたりしてバランスをとります。
最近の研究ではこの無理な姿勢を続けると、心臓や腎臓などの内臓の位置が全体的なバランスをとるために背中側に移動し、背中の痛みやさまざまな病気の原因になることが報告されています。
つまり、人の健康は真っ直ぐな良い姿勢が基本であることは言うまでもありませんが、このことでもうひとつ私たちが気づいていない関係性があります。
それは姿勢が前傾すると無意識に顎に力が入り、歯を食いしばることです。ほとんどの動物は歯列を食いしばっているためによだれを流している傾向がある事からも理解できるのではないでしょうか。
そのため顎や首の周りが緊張して自律神経失調症や胃潰瘍になったり、口の中が虫歯や口臭でいっぱいになったりもします。逆に言うと人が真っ直ぐに立つことで自由になるのは手だけではなく、顎も動物のようにかみ締めていなければならない不自由から解き放たれるのです。
東洋の文化である禅や武道、茶道などそのほとんどが骨盤を締めろとは言わず脇を締め顎を引くようにいいます。
なぜなら、顎と骨盤がはっきりと連動していて、その状態が体全体の姿勢、気力、感情、病気の状態をも決めるものだからです。私たちはこれを相同関係といい、バランス医学である鍼灸医学が長い時間をかけて見つめてきたことなのです。